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FORUM No.02(2006.8.28)

望月久美子
「住生活1000人調査 2006」──住宅像の現在

SESSION01

生活志向の異なる夫婦の住まい方のあり方とは

松井剛──50代の男女のアンケート結果にはシンプルに驚きました。男はベタなニーズを持っていることに驚きを感じたのですが(笑)、田舎やリゾート地など自然の豊かな場所に移住したいと思う男性が4割と言われましたが、本当にそれほどにいるかと思いました。田舎暮らしの何がよいのだろうと思いながら聞いていました。
逆に気になったところがあり、もし夫婦のペアに聞いてみたらどのような結果になったのかと思います。田舎で暮らして、自然を満喫して、時々蕎麦なんか打って、でも食べてくれる人がいないという状況だと思うのですけれど、そういった志向が極めて強いダンナさんには、暴走するダンナを止めるためにまったく逆のニーズを持つ奥さん、という不一致度がものすごく高いペアがいたり、逆に共に自然志向、都会志向だという似た志向をもつ夫婦がいたり、さまざまなセグメントがあると思います。押し並べて男性は自然志向・田舎志向で、女性は都会でこれまで築き上げてきたコミュニティでいろいろやっていくということで、自分はどちらなのだろうかと興味深かったです。
もうひとつ興味深かった点があります。一部で団塊ジュニア世代が戸建て志向が強かったというお話があったのですが、これは年代に見られる傾向なのか、あるいはこの世代特有の傾向なのか。つまり30代前半であればかつても同じように持ち家志向で団塊ジュニアでも同じように現われたと解釈すべきなのか、あるいは団塊ジュニア特有の一戸建てに対するニーズや行動があるのか。世代か、年代かという話はおそらく後半の話にもつながり、田舎志向と都会志向の断絶がこの世代に特有のものなのか、あるいはこの年代であれば過去にも見られた傾向の延長線上にあるのか、という点が興味をもちました。

松井剛松井剛氏

望月──夫婦でのパターンで分けていくことは確かにあると思います。ただ傾向という意味で考えると男性志向、女性志向はまだ底流にはあると思います。女性でも男性志向であったり、女性でも男性志向であったりというバラつきはあるでしょうが、平均的に見れば男性・女性の志向の違いは出ています。でもそれが実際に住まい方として出てくるかは、組み合わせの問題でパターンが分かれてくることもあるでしょう。以前テレビで見たのですけれど、田舎暮らしをしたいダンナさんと行きたくない奥さんがいて、ダンナさんが一人で田舎に行って畑を耕して、収穫した作物を奥さんに宅急便で届けるのですけれど、奥さんは「あーら来たわね」と言ったまま、2年ぐらいそこに行ったことがない(笑)。奥さんは都会で勝手に暮らしています。選択肢としてはそういう暮らし方もありになってきています。だから夫婦の在り方も他方に合わせるというのではなくて、自分の暮らし方は貫いて、だけれどある種の夫婦関係を維持していくやり方もなくはない。それぞれの表現の仕方は組み合わせの問題で両者が幸せになるためには、バラバラな住まい方をする夫婦の在り方もあると思います。

松村秀一──そうすると夫婦で一緒に暮らしている意味は何だろうと思います(笑)。経済的に余力がなければ二人で暮らさないとどうにもならないけれど、余力があればお互いの生活観を犠牲にしてまで一緒に暮らす価値が夫婦にあるかどうかという問題になってきます。お互いが別々に暮らせる余力があれば、片方が田舎に行って時々会えばよいということになります。そうすると世帯がどんどん増えていくので、住宅産業的にはよいのでしょうが(笑)。

山本想太郎──実際は、それこそ余力がないのでしょう。そして統計的に男女のギャップがあることの背景には、そのように同居せざるをえない状況があるのではないかと逆に思います。つまり松井先生がおっしゃったように片方の志向性に対するカウンターパートとしての役割を演じざるをえないという、小社会的なバランスが同居から生まれるのではないでしょうか。

松村──調査の答えの前提には、子供と一緒に住むイメージはないですね。子供夫婦と一緒に住んで自分は隠居になるという考え方がなくて、子供とは別れて住むことが前提にある。おそらく昔は子供と一緒に住むことがもう少しメジャーな考え方だったけれど子供と別れて住むようになり、今度は夫婦が別れるようになる。どれぐらいのタイムスパンで起こるかはわからないけれどありえます。ただ一方で老後の心配や不安があり、難しいですね。

望月──最後の最後はどこかで一緒になるか、夫婦のどちらかが面倒をみるという何らかのケアがあると思います。だからそこまでは精神的にも物理的にもこの人と一緒に最後までいくという思いが夫婦で一緒に暮らすところにつながってくると思います。本当の意味で死ぬ場所をどうするのかというイメージはないでしょう。ただなんとなく保険はかけておきたいと思っているのかもしれません。その保険がまだ夫婦であることなのかもしれません。

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