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FORUM No.03(2006.10.12)

吉池基泰
住生活エージェント型ビジネスの役割と展開

LECTURE02

消費者起点の業界構造とは

吉池──住宅産業の全体的特徴について述べてきましたが、今後の環境変化の課題として、まず増えている空き家の問題があります。1970年代前半に全都道府県で住宅ストック数が総世帯数を上回り、それ以降空き家は増え続け、現在は700万戸ぐらいあります。つまり、新しく家を建てる必要性が小さいという状況になっているのです。これは住宅の新築だけでなく、宅地政策の世界でも議論されていて、従来ならば宅地供給は新しいところを求めるという議論が一般的でしたが、そうではなくて空き家に人を住まわせれば新しく宅地を求めなくてもよいのではないかという議論が出てきています。そういう意味で空き家の活用が大きな課題になっています。
2点目としては、縮小する新築市場の問題ですが、2015年に全国レベルで世帯数がピークアウトします。その後どんどん世帯数が減ってくるので、従来は世帯増の部分で新築を支えていた割合が多かったのですが、世帯が増えなくなると後はもう建て替えに頼らざるをえなくなります。大手のハウスメーカーも建て替えのシェア確保に力を入れるようになってきています。近い将来新築需要増が見込めなくなり、2015年ぐらいには新築は90万戸ぐらいになることが予想され、そういう状況も考えておかなければならないわけです。
今後の世帯構造の変化を見ると、単身世帯の割合が増えてきています。それから夫婦のみの世帯の割合も増えてきていることが特徴として挙げられます。そうすると、住宅数が相当減ってくると同時に、住宅の面積も相当減るということです。広い住宅がそんなにいらなくなると、建材の量も当然減ってくると思われます。ただ、キッチン、トイレ、バス等については、一世帯ひとつは必要になるとは思いますので、あまり影響を受けないかもしれません。
それから少子高齢化とよく言われますが、いわゆるアクティブシニア、団塊の世代以降の割合がどんどん増えてくるのですが、共働きの子育て世帯にも注目する必要があるでしょう。共働きの子育て世帯は非常に忙しく、ベビーシッターサービスや家事サービスを使う人たちも増えてきています。世帯構造が変化することは、従来ないライフスタイルを持つ人たちの割合が相当増えるということです。ライフスタイルの多様化、ニーズの多様化と言われますが、その背景にはこの世帯構造の変化があると思います。
次に少し前ですが、2004年に行なったアンケートについてです。消費者が不安に思っている点として、「手抜き工事がされないか」が8割ぐらいありました。これが一番大きい消費者の不安点です。2番目が「予算内で収まるか」、3番目が「よい依頼先が見つかるかどうか」「実際に提示されたが価格が適正か」「条件内で最適な間取りやプランが得れられるか」をそれぞれ6割くらいの人が挙げていました。このあたりが消費者の不安点として大きくクローズアップされています。ただ、手抜き工事の問題が8割になっていますが、今アンケートをとると、この不安はもっと高くなっていることが想像できます。このような問題があるということ、これは消費者の立場に立って業界が対応しなければならない課題ということです。
今の話をまとめると3つのニーズがあると言えます。ひとつ目は、価格の妥当性をきちんと示していく必要があるということです。値段を下げていくことは大事なのですが、消費者は見積もりが妥当かどうかについて判断できないので、それが妥当かどうかを示す必要があります。2つ目は欠陥住宅の問題で、姉歯問題に代表される構造上の問題です。それから世帯構造の話をしましたが、3つ目はニーズが多様化してきていることに対する問題です。大きく分けてこの3つのニーズに対応していかなければなりません。言い換えれば消費者がもつ不安・不信に対応していく必要があるということです。

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