FORUM No.04(2006.12.7)
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遠藤和義 |
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SESSION
遠藤和義×松村秀一×松井剛×山本想太郎 01建築工事費と諸経費の概念 |
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LECTURE02 棟梁型大工・工務店の将来は? 遠藤──説明してきたように、大工・工務店が直傭大工の融通性と資材の調達努力で諸経費を確保するビジネスモデルだとすれば、昨今の状況は非常に厳しいと言わざるをえません。ひとつはプレカットが普及して、東京では坪5500〜6000円ぐらいでやってくれます。手刻みでは大工さんが1坪を大体1人工で刻みますから、日当1万6000円〜2万円では手刻みに全く競争力はありません。リフォームや増築の場合でもCADで図面がかければ、プレカットのほうは連動します。工場も小回りが効くので、トラック1台分でもプレカット工場は請けますから、手刻みの仕事はどんどん減っていきます。また手刻みは廃材が出たり、音が近所迷惑になったりするのでプレカットのメリットはさらに増している。つまり、月の半分を下小屋で刻む従来の大工の仕事のスタイルは崩れてしまっています。大工が現場で施工していた造作も相当に部品化やユニット化されて、大工の飯の種は減るばかりです。すでに1棟をまとめられる棟梁クラスの大工は相当に高齢化しています。団塊世代より少し上の世代で、昭和30、40年代前半にこの業界に入ってきた70歳前後の人たちです。彼らは高度経済成長期に、戸建持家を持つという国民の夢を支えてきた人たちです。昭和の経済成長のひとつの華だと思います。その後、この分野に若い人が入らないと随分前から言われてきているのですから、今後間違いなく人材は枯渇します。
ここに豊島区と板橋区の1965年から現在までタウンページにのっていた、大工・工務店の数の推移のデータがあります[fig.2-2]。豊島区、板橋区は今でも建売住宅がよく建つところですが、それでもこのように減っています。古老大工にお聞きしたら、豊島区と板橋区には手刻みのできる大工はもうほとんどいないと言っておられました。材木屋の数も豊島区・板橋区はピークの4分の1、仙台の名取、徳島も減っている[fig.2-3]。減っている理由は、みんなプレカットになっているからです。町の材木屋は木材を問屋や市場から仕入れて店に並べるという、資金力の必要な商売でした。今はもうそれが持たない。材木屋の組合の方に聞くと、廃業された方の多くは、大工さんに貸していた下小屋や加工場、資材置き場にマンションを建てて、悠々自適でやってはいるようですが。
そういうなかでも、何とかうまくやっている工務店も探したい。工務店として正しく元請けに留まるビジネスの可能性はないのかと探しています。最近見たいくつかの例の共通点を挙げると、やはり手刻みにこだわることがあります。直傭大工を抱え、それも親子二代で同じ車で現場に来るようだと素晴らしい。手刻みでないと直傭大工は成立しません。プレカットにすれば、半端な大工仕事しか残りません。それからもう一点は、プレハブや大手ビルダーに対して商品で差別化することです[fig.2-04]。特殊な例ですが、今回取り上げたC工務店は、住宅展示場にある20数戸の中で唯一土壁仕様を採用しています。地元の方には、土壁でないと家を建てた気がしないという思いがあるのです。そうすると多少単価が高くてもその工務店に頼む。そこに頼んで土壁でつくってもらって、時間をかけてしっかりつくることが客にとっても、住宅にとってもステータスになります。そういう工務店を残したい。 |
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