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FORUM No.06(2007.3.19)

松村秀一
「200年住宅」と住宅産業の未来

SESSION04

分化する新築とリフォーム業界

松井──新築とリフォームは業界としては分化していくという印象をもちました。リフォーム系というのは潜在的に海外旅行と競合するサービスを提供するもので、新築は小旦那に頼っていく。結論のひとつとしてはどちらに行くかをはっきりすることでしょうか。

山本──私が設計を頼まれるお施主さんによく最初に聞かれることは、この家はリフォームしたほうがよいか、それとも建て直したほうがよいかということです。そういう意味で現時点では新築とリフォームは完全に分化していません。実は本当にダメな場合を除いて、性能を明確に判断することは困難です。しかしいずれにしても「大丈夫そうです」「これはリフォームにしましょう」と判断するのは建築家です。そういう意味で業界として完全に分化するのはなかなか難しい気がしています。

松村──新築とリフォームでは確かにコアになる技術は近くて、結局は空間を触る技術です。例えば居心地のよい空間をつくったり、日当たりのよい空間をつくったりする建築的方法は共通しているのですけれども、やはり僕は新築とリフォームは「違う」と思わないとビジネスとして展開しないと思います。違うと考えていないから、リフォームをやっていても新築が少し増えるとすぐに戻ってくる。工務店が最も典型的で、去年はリフォームで凌いでいたけれど、今年は新築の注文がたくさん入ったからまた新築をやりますとなる。住宅メーカーでも工務店でも規模の違いはあってもみなそうです。新築が減ったらリフォームを頑張るといってリフォーム事業部などをつくるけれど、新築が増えるとまたそちらにいき、リフォーム事業が育たない。同じ職人の体制を利用して、市場での現われ方が新築かリフォームかという違いだと理解しているのでは駄目なのです。リフォームと新築では職人の体制が違わなければ他産業との競争になりませんというのが今日の話です。例えば、新築だと戸建で30〜40職種ぐらい入っています。それはあるまとまりがある工事だから成立している分業体系です。全部で2000万だとすると40職種になっても一職種50万になります。ところがリフォームで200万の費用でやる場合15職種入ってしまうと、この施工体制はもたない。そうするとリフォームに向けては15職種から4職種にしたほうがよいわけです。現在は新築の体制を無理矢理リフォームに当てはめているために、信用も獲得できなければ価格競争力もない。新築とリフォームは根は同じだけれど、ビジネスとしては違うと構えないと発展しないという危惧を感じています。

山本──業界を分けるメリットとして、消費者に対してわかりやすくなるということがいえるかもしれません。他産業と競合することを考えるとリフォームにするか、新築にするかを決めたらどういうシステムに乗ればよいかがわかりやすくなることが重要です。現在家を建てよう、リフォームしようという人は、先ほど怪しい業界と言われましたが、どこから入ったらよいかわからないのが現状で、普通の商品を購入するのと違う点です。そこは少なくともわかりやすくしていかなければいけない。その役割を建築家が果たしきれていないのが口惜しいのですが(笑)。それで建築家という職能も分割されてもよいのかもしれないですけれど、そういうわかりやすさは未来像としてわれわれの業界はもっていかなければならないと思います。

松村──山本さんが建て替えるかリフォームするかどちらにするかまず訊かれるという話があましたが、例えば山本さんが事務所で、リフォームは青いTシャツ、新築は赤いTシャツで対応しますというときに、建て替えるかリフォームか迷っている人は僕のイメージでは青いTシャツです。建て替えたとしてもそれはリフォームの延長での組み立てという考え方で建て替えまでやるということだと思います。初めから新築にしたいという小旦那には赤いシャツを着る。だから同じ新築でもリフォームの延長線上にある建替えと、俺の家を建てたいという人に対応するのとでは違うのかもしれない。

山本──業界を分けたら、今度はリフォーム業界が新築の商品を出したり、新築業界がリフォームもやりますという微妙な競合が起こるかもしれませんね。私としては、今後この業界では、わかりやすくできない人たちが生き残っていけなくなると感じました。
最後に都市住宅の未来像についてお話をいただきたいと思います。

松井──私はまだ家は持っていないのですが、何も知らないと新築信仰に知らず知らずに影響を受けてしまいます。具体的に買うとなると様々な現実的な問題に直面して、まあ無理だとか、あるいは身の丈にあったものは何かを考え始めるということですが(笑)。
業界を分けていくというのはきわめてクリアなシナリオだと思いました。シナリオというのは共有されないとうまくいかないのですが、「200年住宅」はマーケットから遠ざかる発想だと思いました。むしろ医療や教育みたいな方向の考え方なので、よりマーケットに委ねないといけない。新築は小旦那で、リフォームはある潜在的なコンペティターを生み出すマーケットに行き着くというのはわかりやすいシナリオなので、誰かが演出をしていけば実現可能なシナリオだと思いました。ただ僕は買うなら中古住宅か100戸程度のマンションあたりです(笑)。

山本──最後に松村先生、新たな産業への転換がうまくいくかということも含めて総括をお願いします。

松村──住む人のある種の想像力を刺激することが産業側から出てこないとなかなか住宅産業も変わらないかなという感じもします。住宅を買ったり選んだりするのは人生の決定的な事柄で、金融の制度などが全部くっついてマンションや住宅という形態になっているので、世の中で皆がやっているある種安心できるモデルでないと難しい。田舎でログハウスをつくるというのも周りで4、5人やっていれば自分もやってみるかと思いますが、アメリカの雑誌で紹介されたぐらいではなかなかできない。 僕は、基本的に僕らが働く分野をできるだけおもしろくしたいと思っていますから、確かなものを確かに供給するきちっとした産業であればうれしいかというと決してそんなことはなく、常に面白いことが起こっている業界にしたい。そうした観点からすると、今は住む側の人の抱くイメージがかなり限られているから、そこを刺激する事柄が常に起こっていて、それがある制度的裏づけを持って動くことを考えなくては駄目だと思いました。10年後に松井先生と会ったときに違う刺激をもって現われる、そういうものを建築から生み出さないとおもしろくないですよね。

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