Renovation Archives [069]
鈴木建築事務所
●SOHO拠点施設
[展示場・会議室]
《ちよだプラットフォームスクウェア》
担当=福岡英典(明治大学大学院)
概要/SUMMARY
設計概要
所在地=東京都千代田区神田錦町3-21
所有者=千代田区
運営・管理=プラットフォームサービス(株)
用途=SOHO拠点施設(以前は中小企業センター)
構造=鉄骨鉄筋コンクリート
規模=地下2階、地上5階
敷地面積=1,303.09平米
建築面積=810.19平米
延床面積=6,128.33平米
竣工年=2004年9月(既存1981年)
企画=千代田区街づくり推進公社 (現在、(財)まちみらい千代田)
設計=鈴木建築事務所
施工=奥村組・鈴木組JV

《ちよだプラットフォームスクウェア》外観
■千代田区が展開している千代田区SOHOまちづくり構想の趣旨をふまえ、公共施設(千代田区中小企業センター)をSOHO拠点施設としてコンバージョンした事例である。
旧中小企業センターは地元の中小企業が利用できる会議室や展示室として、貸し出し利用が行なわれていたが、産業構造の変化にともない稼働率約25%と停滞していた。また、1981年竣工の同ビルは設備などの更新時期も迎えていた。そこで地域再生の新たな方策をさぐるために設置された千代田SOHOまちづくり推進検討委員会から提言された「中小ビル連携による地域産業の活性化と地域コミュニティの再生」の趣旨のもと、運営・管理を一括してできる民間事業者の募集が開始され、現在ちよだプラットフォームスクウェアを運営するプラットフォームサービス株式会社が選定された。区所有建物による同プロジェクトとしてはもうひとつ秋葉原のリナックスカフェがある。
現在はSOHO支援施設として貸しオフィス、会議室として再生され、(財)まちみらい千代田も同ビルに入居している。
施工プロセス/PROCESS
工期は2004年5月から9月。少しでもコストを抑えるため必要最低限の改装に抑えている。
外装仕上げも高圧洗浄と薬品洗浄を施し、目地シーリングを打ち直す程度で、元のレンガの雰囲気を大切にしている。躯体も基本的にそのままで、内壁も下地を立ててボードを張るなどしている。2階や3階は床材もそのままで、天井は取り外し開放感を演出している。設備は全面的に交換している。SOHO拠点施設として重要な通信設備も、後の交換も見据え、十分な対応がとられている。区施設としては当然かもしれないが、屋上は緑化され、ヒートアイランド現象にも配慮されている。
上左:階段。特になにも手をつけず以前のまま使用している
上右:床。2階、3階の床は、元々展示場だった時の床をそのまま使用
左:机。2階のオープンネストにあるフリーアドレス用の机。以前使われていた物を改修して使用
以上、筆者撮影
左:天井。2階、3階の天井は取り外され、カラフルな布で装飾されている。また写真中央の白いフレックス・チェーンの中にケーブル類は収められ床まで下ろされている
筆者撮影
右:ちよだプラットフォームスクウェア平面図。拡大
提供=プラットフォームサービス(株)
現状/PRESENT

1階カフェ
食事だけではなく、打ち合わせやイヴェントスペースとしても使われている。オープンカフェもあり利用者は館内利用者だけに限らない

コンシェルジュとビジネスセンター
1階にある館内のさまざまなサービスを受け付ける総合窓口

2階オープンネスト
登録者は自由に自分の仕事スペースを選ぶことができる

新旧の壁
レンガ調の改修以前の壁は館内随所で見られる。巧みにデザインとして使用されている
■本プロジェクトは千代田区のSOHOまちづくり構想のモデルケースである。ちよだプラットフォームスクウェアはこの構想のなかで、「コア」に位置づけられる。まずひとつの街区の中に共同利用できる会議室や、事務支援機能等を持つ「コア」を公共側から働きかけてつくり、それを中心として「サテライト」とよばれる周囲の空き室や空きビルにSOHOを呼び込む。このコアとサテライトの関係はやがて街区をも越えていく。それを実現していくために、民間が現代版「家守」の役割を担い、プロパティマネジメントからタウンマネジメントまで、幅広く実際の運営を行なっている。
コンバージョンにあたって、建物所有者である千代田区は、まずビルを利用目的に制限のある行政財産から、普通財産に変更することによって自由度を確保している。これにより実験的なアイデアを実行に移すことが可能となった。建物概要としては、1階にSOHO事業者支援の総窓口として「コンシェルジュ」を設置し、コピーや製本などさまざまなサービス機能を提供している。また、カフェもあり、食事や休憩だけではなくビジネスの打ち合わせの場所としても用いられている。2階、3階がSOHO事業者のワークスペースであり、特に2階はオープンネストと呼ばれる、登録会員は自由にデスクを選べるフリーアドレススペースが中心となっている。5階と地下1階にはさまざまな規模の会議室が用意してあり、ユーザーの要望に対応できるようになっている。
(福岡英典)
【参考】 RENOVATION FORUM No11=清水義次「家守(やもり)型まち再生の試み──神田エリアを中心に」
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