Renovation Archives [092] ●集合住宅のリファイン 青木茂建築工房《IPSE都立大学》
取材担当=欠端朋子
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概要/SUMMARY | ||
外観を既存タイル貼からガルバリウム鋼板・折板貼りによる立体的な構成で覆い、既存建物の保護と外観一新を図っている。凹凸部分には室外機置き場やバルコニーが配されている |
東京都内に建つ築36年のマンションを「リファイン」した事例である。 建主であるデベロッパーが保有物件の改修のため青木茂氏に計画を依頼。解体調査やプランニング、有益性の検討を双方で重ねながら、民間賃貸集合住宅における再生事業の実例として計画は進行した。 既存建物は老朽化によるタイル剥離や設備劣化等に加え、耐震性能・高さ制限・容積率といった既存不適格な部分が存在するなど多くの問題を抱えていた。そこで床面積や高さ確保のため、施工方針を確認申請対象工事とならない範囲としながらも、その範囲のなかでいかに建物を甦らせるかが最大のテーマとなった。 計画では主に躯体の耐震補強と空間の一新を軸に進められたが、単なる内外装改装工事ではなく、「現代のライフスタイルに順応した居住環境を提案する」という大きな意味も込められていた。総住戸数30戸を確保しながらも天井の高さやプランの可能性を最大限に引き出すことで、和室中心であった既存住戸をオープンな空間へと更新。さらに1階エントランスや共有部の利便性・快適性を高めることで、時代に即した快適な住空間が生み出された。これにより、当初は保有物件のメンテナンスとして進行していた計画であったが、最終的には不動産証券化による収益性の向上へと結びつくこととなった。 |
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左:リノベーション前外観 右:リノベーション後外観 |
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設計概要 ●所在地=東京都目黒区 ●用途=集合住宅 ●構造=鉄筋コンクリート造 ●規模=地下1階地上5階 ●敷地面積=339.33平米 ●建築面積=238.74平米 ●延床面積=1,539.35平米 ●竣工年=2005年1月(既存:1969年) ●設計=青木茂建築工房 ●施工=五洋建設 ●建主=(株)モリモト |
現状/PRESENT | |
上:基準階平面図(既存)/下:同、新規 |
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上:地階エントランス部分(左:既存/右:新規) 中:新規メインエントランス 下:共有廊下(左:既存/右:新規) |
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住戸内(上:既存/下:新規) 写真すべて 提供=青木茂建築工房 撮影=渡辺良太郎 |
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■近年の新たな都市戦略として、中古マンションをはじめとする既築不動産物件を改装・改築し、ユーザーへ提供しようという試みが活発化している。それは、中古マンションの利活用による事業展開への流れと、肥大化する都市環境を既存ストックによってコンパクトに循環させようとする流れが合致したものである。さらにそのような既存の建物を、現代のユーザーにより適応したスタイルへと洗練させることで、中古ハードウエアの価値はさらに向上していくのである。 本事例はこのような流れのなかにおいて、単なる改築ではなく新たな都市型の居住環境を提案することで、都市に蓄積されつつあるマンションストックの将来像を明示したものと言える。居住環境(ハードウエア)をリノベーションするということは、住まい手の生活スタイル(ソフトウエア)をリノベーションすることでもあるが、社会的動向と現代ユーザの要求がうまく絡み合った好例となった。工事完了後、この物件はおよそ2カ月で満室になったという。この結果からみても、本プロジェクトは大きな成功を収めたと言えるだろう。また一方で、現行法規との不一致による規制など、今回の取り組みでリノベーションに対する現代社会の不自由さも浮き彫りとなっている。事業としての成功例であると同時に、結果的に今後の再生事業における新たな分岐点として位置付けられるプロジェクトとなった。 これからさらに発展するであろう不動産再生事業の今後の動向に注目したい。 ★参考[第3回 リノベーション・フォーラム] 進化するリファイン建築――環境、都市、工法の再生|青木茂 https://forum.10plus1.jp/renovation/forum/003aoki/003pro.html
(欠端朋子)
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