レクチャーセッション
●進化するリファイン建築
青木茂──今日はお呼びいただきましてありがとうございます。九州で仕事をしているのですが、じつは九州での講演はほとんどありません。東京が一番多く、それ以外でも呼ばれるのは九州以外で、東京には月2回は来ている状況です。東京都下では10件ほどの提案をしているんですが、やっとその1件が着工しまして、先々週の金曜日に解体と補強を半分ほど終わった段階で見学会をさせていただきました。
『建物のリサイクル』 『リファイン建築へ』
左:『建物のリサイクル』
(リファイン建築研究会、1999)
右:『リファイン建築へ』
(建築資料研究社、2001)
以前に『建物のリサイクル』と『リファイン建築へ』という本を出していますが(右図:表紙)、そのなかでリファイン建築の五原則(1、新築と同等以上の仕上がり 2、新築の半分の予算 3、用途変更が可能 4、耐震補強により新築並みの強度と耐用年数 5、環境に優しい)というものを掲げまして、これに合致するならどうぞ「リファイン建築」という名前を使って仕事をして下さいといったのですが、仕事を重ねるにつれ、この本を書いたときとはリファイン建築にもかなり違った様相が出てきた、というのが率直な感想です。
今日は、そのなかで「環境」に関する問題、それからいま考えていることで、建物単体だけではなく、もう少しエリアを拡げて「都市」問題に少し手を突っ込めないかということ、そして最後に集合住宅について話してみたいと思います。いま大分市内で設計中の賃貸の集合住宅で「居ながら施工」を試みようとしておりまして、かなり問題は多いと思いますが、これが成功すれば、現在社会問題化している築30年を超え、使用上問題を抱えた分譲マンションを居ながらリファインできるのではないかと思っております。

いままでリファイン建築の講演で呼ばれますと初めて聞かれる方がほとんどで、同じような内容でやってきましたが、今日は難波先生に呼ばれましたので、少し切り方を変えてこの3つのことを掲げて話してみたいと思います。
それと、僕はいま55歳ですが、ちょうど僕らの年代の優秀な技術者がリストラや転職でずいぶんほかのところへいくということで、技術の空洞化を感じています。技術者は一朝一夕ではできません。それを放っておきますと建物の安全性に対する信頼を得られなくなると懸念しています。いまの安全と思われている建築は本当に安全なのか、そういうところも少し含めて、ご提起したいと思います。

………>>NEXT

HOME