プロローグセッション
●これからの排水問題
今までお話したことを整理したのがfig.4-01ですが、まず、これからの排水問題はスケルトン部とインフィル部を確実に分離していくことが必要だと思います。しかし分離するとなると、誰がそれを管理するのか、清掃などまで含めて配慮する必要があります。
二番目として、器具配水管概念の確立という表現をしていますが、これは排水管の横枝管は誰が工事するかという議論になります。建築工事だと、管工事屋さんがきて配管してそこに器具をとりつける形ですが、ヘッダー方式になってくると、器具からヘッダーまではメーカーがやることに意味がある。すなわち配管を器具側へもっていきたいというのが、ヘッダーをつくったときの真意です。というのは、バスユニットなどではユニットのなかにトラップがあって、そのユニットの境界面まで配管をもってきて、あとはつないでいる。しかしそこまでやるんだったら最後までやってもらって、メーカーにその責任はあるようにしたいというのが、実はこの排水管の概念です。
次に、これはちょっと乱暴な言い方ですが、「学会基準遵守から自己責任型へ」ということです。絶対に漏れない安全な設計をしていたら、ものすごく大掛かりなことをやっていかないといけないし冒険もできないわけですが、コンバージョンなどは、自己責任型の排水管システムにできますし、したほうがよい。今までの排水の基本は、非常に原理的なものやベーシックなものをきちっとして、誰がやっても間違いないものにしようという考え方できています。それはそれで悪いわけではないので、基本的に強制排水については、自然排水にプラスアルファとして使うことを大原則にして説明しています。これは都市機構のKSIの委員会のなかでも基本的にはそういう話にして、今のところは、強制排水だけでひとつのビルをつくることはお勧めしていません。
排水管の維持管理とリニューアルの対応については、排水管は今のところ、普通の給水に比べればもちがよい。もちがよいから、まだ大掛かりなリニューアルが入っていないのですが、これから入ります。そのときに排水管をどう改修するか、まだ方法論が明確になっていない。排水管のライニング工法もできています。給水管のようにさびや汚れを器具で落として、そのあと樹脂でコーティングしようという考え方ですが、JIS型継手の場合はこれができますが、特殊継手になってくると、横と縦の間が複雑でなかに回転の羽まで入っているのでこの方法はとれない。となると、排水管をどうリプレイスするかが、これからの大きな課題になってきます。現に、都市機構の昭和40年代の建物は、バス部分などに配管が露出していて、その露出した配管を生かしながらリニューアルしているわけです。あと30年間建物を使いたいらしいのですが、今の配管で30年間もつのかという問題があります。これを入れ替えるためにこの配管を切ってしまったら上の階の排水を流せなくなりますから、古い配管を残しながらうまくリプレイスするには、外にせよ中にせよ、別のところに1本新しく立てるしかない。そして改修するたびにその配管につないでいって、全部つなぎ終わったら元の配管を撤去するという考え方がある。あるいはスパン改修みたいな、縦型に「ちょっとどいてください」という形で改修するか、ソフトとハードを含めた排水管のリニューアル方法は、これからの技術開発の課題です。
次に、水まわりの問題です。これも今後のひとつのテーマであるかと思います。ただ集合住宅の場合は、永久に必要な水まわりだけでなくて、例ば介護期間などのように、仮設的につくりたいというニーズが当然あると思います。そうなってくると、強制排水方式を主体とした水まわりユニットがひとつの道具になってくるかもしれません。
最後にティッシュ、水資源システムの開発。これはオプションの話でして、いわゆる建物のなかの排水問題のほかに、外の排水問題、水の問題を合わせて考えていく時代に入っているのではないかということです。


fig.1-25

●団地再生のキーとなる技術は何か
団地の再生では、日本型とヨーロッパ型と書きましたが[fig.4-02]、ヨーロッパは都市国家的な、あるひとつの領域のなかで電気、ガス、油、熱を上手に使っていこうという発想で社会システムができている。それに対して日本の場合は、供給処理システムで、ガスはガス、電気は電気、熱は熱、上水は上水、下水は下水、単独にそれぞれの形で処理されている。電気、ガスの競争が激しいことや、電気と熱をいわゆるコンビネーションしたコ・ジェネレーションというシステムができてきたこと、水も上下水が循環型になっていくと考えると、今後は、排水問題も地域単位で処理していく必要があると思います。
インフィルから、サポートティッシュまでの間の設備が日本にはないので、もう少し開発してもよいのではないかと考えています[fig.4-03]
今、団地が瀕死の状態にあって、多くの空き家が出たり、入居者が高齢化したり、いろいろな問題が出てきています。そういうものを再生していく試みが一方で始まり、こういうエレベーターをつくることもひとつの方法としてあります[fig.4-04]fig.4-05はヨーロッパのものですが、太陽光発電のパネルを建物の壁に取りつけたものです。このようなエネルギー問題を含めて、省エネ、バリアフリー、省資源、循環型など、ユーティリティ系の設備のもつ意味が非常に大きなウエイトを占めてきます[fig.4-06]。特に、電気と暖房、給湯、排水、ゴミ、中水、雨水、上水、それから情報による安全性、そういうものを含めたユーティリティ産業が、今後新しい開発のテーマになってくると思います[fig.4-07]。[了]


fig.4-02

fig.4-03

fig.4-04

fig.4-05

fig.4-06

fig.4-07
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