レクチャーセッション
●コーポラティブとコンバージョン
田村誠邦――今日は、広い意味でのリノベーションについてお話をさせていただきたいと思います。まず私がどういうことをやってきたかといいますと、ゼネコンに10年勤めた後、都市計画系のコンサルティングを10年間やりました。その後、独立して今年で9年目ですが、建築プロジェクトの事業コーディネートや、企業や個人の建築プロジェクトの企画コンサルティングをしています。
最近の取り組み分野の一つにコーポラティブがありますが、これはやりたいからやっているというより、プロジェクトを実施するための一つの手段であると位置づけています。「丘の上ハウス」「近衛町アパートメント」「小石川の杜」の三つのコーポラティブハウスプロジェクトは、いわゆる「つくば方式」(定期借地権の一種「建物譲渡特約付借地権」を応用してスケルトン住宅を建てる住宅供給方式)といわれるもので、スケルトン定借という仕組みの定期借地権を使ったプロジェクトです。また「深沢レジデンス」は通常の所有権のプロジェクトで、「求道学舎リノベーション住宅」は近角真一さんと一緒にやっている大正15年の建物をリノベーションするプロジェクトです。


このフォーラムでは、リノベーションの定義について「何も建っていないところにつくるのではなくて、すでに存在するものを前提にして何かを生み出すことである」と初回に難波先生がおっしゃられていました。そういう意味では「丘の上ハウス」「近衛町アパートメント」「小石川の杜」「深沢レジデンス」も、すべてリノベーションのプロジェクトです。
「丘の上ハウス」は昭和の初期の住宅が建っていたのですが、そのままでは維持できないので土地活用として何かいい方法はないかということで、定期借地権付きのコーポラティブ住宅を建てることになったものです。「近衛町アパートメント」は文豪の舟橋聖一先生の旧宅敷地内にあった学生寮を取り壊してつくったコーポラティブ住宅で、先生の書斎を集会室として建物の中に組み込んでいます。「小石川の杜」は神社の一部です。ここには老朽化した擁壁がありましたが、その擁壁を解体して作り直すお金がなかったため、擁壁のかわりに地下2階地上3階、下から見ると5階建ての斜面住宅をつくりました。「深沢レジデンス」は緑を守るために土地を細分化させたくないということで、地主さんと小規模の等価交換を行って集合住宅をつくりました。事業規模的にディベロッパーが入りようがなかったのでコーポラティブ方式で事業化したというものです。
マンションの建替えもいくつかやっていますが、一番有名なのは「同潤会江戸川アパートメント」の建替えです。ここでは一号館の保存という課題がありました。それは残念ながら実現できなかったのですが、そのあたりについては後で話したいと思います。「麻布パインクレスト」は、日本で最初の建替え決議を行なって建替えたマンションです。これは都市計画の権威の伊藤滋先生と一緒にやりました。そのほか「ジードルンク府中」「諏訪町住宅」といったマンション建替えプロジェクトに関わっています。
コンバージョンについては、難波先生や松村先生とともにコンバージョン研究会をやって参りました。しかし、机上のスタディばかりで、なかなか実際のプロジェクトに携われなかったのですが、ようやく「求道学舎リノベーション住宅」がスタートしたところです。
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