レクチャーセッション
司会──今回は前回までとは違った視点から都市再生の可能性について考えていきたいということで、森ビル常務取締役の本耕一先生をお招きしました。

●アーバンニューディール政策
本──私はもともと日建設計におり、その頃INAXさんとは、今では汎用品になっている手洗い洗面器や小便器、壁掛け式の洋式便器を一緒に開発しました。
森ビルがやっているプロジェクトは、「さら地」の上に何かをするというのではなくて、もともと人が住んでいたり、街があったり、という所を手がけています。そういう意味では、森ビルがやっていることはリノベーションと言えるかもしれません。同じ再開発でも、今進んでいる六本木(赤坂)の「東京ミッドタウン」プロジェクトは防衛庁跡地で、「さら地」になってスタートしているという意味では新規のプロジェクトと同じで、私たちのそれとは少し違うと言えるかもしれません。今日はそういう視点で、森ビルの街づくりの考え方を紹介したいと思います。
1999年に森ビル社長の森稔が「アーバンニューディール政策」として、街づくりのひとつのあり方をまとめております。今日お話しする内容は、そのベースと近いと思います。その前に、六本木ヒルズがなぜできたのかということについてお話したいと思います。都市が抱える共通の問題で、安全性やゆとりや潤いが欠ける市街地があったり、既存経済のストックが陳腐化、国際競争力の低下、少子高齢化社会などがあります。都市再生特別措置法が平成14(2002)年に施行されましたが、背景にはこのような問題があります。都市再生本部は首相直轄の組織です。都市再生は国家的課題として位置づけられ、都市再生により経済的な再生を図っていこうという施策です。措置法に基づいて緊急整備地域が指定されています。その中においては、都市計画提案を自分たちで提案することができ、それを特区として認めてもらうことで、今までの都市計画にとらわれることのない計画を考えることが可能な制度ができたわけです。10年の時限立法なのですが、都市再生特別区では、都市計画決定を行なうのにこれまではものすごく時間がかかったのですが、同法によってすみやかに認めることも盛り込まれています。それから、金融支援で、公共施設を整備したりすることにより、事業の立ち上がりの金融を支援したり、ということも同時に行なわれます。
………>>NEXT

HOME