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GHでは、例えば、朝食後の体操、掃除、昼食後に、入居者とスタッフが一緒に歌を歌ったり、工作物を作るなど、リハビリを兼ねたレクレーションが行なわれるなど、プログラム化された活動が多く、一日の生活パタンが定常化しやすい。《Hn》《Sr》ともに、このようなプログラム活動が取り入れられているものの、改修前の住戸ユニットが明確に保持され、空間が分節されたHnとユニットが解体/一体化された《Sr》における入居者の過ごし方を比較すると、両者の差異が明らかである。
・居場所、過ごす相手の選択可能性
一日を通して、《Sr》では入居者の多くが、個室、あるいはリビング・ダイニングを居場所として限定的に過ごし、移動が少ない。入居者は、8人いるが、そのうちの特に5人は、一日の大半をリビング・ダイニングで過ごしている。一方で、《Hn》では、自由時間をダイニングだけでなく別のユニットのリビングや洗面所前などで過ごしており、居場所が分散・多様化する傾向がある。つまり、入居者がその時々の気分や過ごし方に応じて居場所を選択することが可能となっている。 さらに、居場所とも関連するが、《Sr》では、プログラム化された時間及び自由時間ともに、概ね一緒に過ごす相手が常に同じ顔触れでありさらに、6-7人の大きな集団となることが多い。 一方で、《Hn》では、自由時間に、1人でソファでうたた寝、1人・2人・3人でリビングのソファでテレビを見る、廊下で2人が立ち話、ダイニングのテーブルで3人がおしゃべり、ダイニングで4人がテレビや絵描きなど、比較的少人数で、随時異なった顔触れで過ごす傾向にある。入居者が一緒に過ごす相手を主体的・偶発的に選択している。 |
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・他者との出会い
入居者同士、あるいは入居者とスタッフとの偶発的な出会いによって、おしゃべりや一緒に移動するなどの新たな行為が発生した場面の数は、《Sr》では、入居者同士が6回(うち、ある入居者が半数の3回)に対して、スタッフとは39回の出会いがある。つまり、全体的に入居者の移動が極めて少なく、活動展開の契機は、スタッフとの出会いによるものが多く、入居者同士での新たな生活・活動の展開が少ない事を意味している。 一方で、《Hn》では、入居者同士が19回(入居者に偏りがない)、スタッフとが25回を占め、《Sr》に比べて入居者同士の出会いが多い。大半の入居者がリビング・ダイニング・洗面所・廊下・個室等の性格の異なる場所の間を頻繁に、気軽に移動することで、他者との偶発的な出会いの機会が増えることが、作用している。そのことが、結果的に、居場所や行為の多様性や、スタッフの誘導によらない自発性・主体性に結びついている。 |
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・ユニット化による自領域の拡張と明確化
《Sr》では、自室に近いトイレと遠いものを両用する入居者が多く、居る場所に応じてその近くのトイレが使用されている。一方、《Hn》では、ダイニングを除き、入居者は、たとえ別の場所に居ようとも、わざわざ自らの個室のあるユニット(自ユニット)に戻ってそこのトイレを専用的に使用している。自ユニットのトイレが自分の場所として認知されている。 また、入居者毎にリビングを使用する場面数をみると、リビングを含むユニットを自ユニットにしている入居者が、各々総場面数13回のうち、12回と最もよく利用している。また、一人で過ごす場面の5回/6回(全体)が自ユニットの入居者であり、リビングはそこを自ユニットとする入居者の自領域と認知されている。
以上のことから、ユニット化されることで各自が帰属するユニットが明確になり、入居者は、自ユニットを自領域として認知しやすいこと、また、個室廻りの共用空間は、自領域の延長として捉えられ、その利用が促進される。 |
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リビングの利用状況
註=この表は、誘導以外の場面での、L空間における入居者の滞在場面数である。総場面数は、13場面である。 |
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《Hn》のリビング リビング周りの個室の入居者が、自発的にテレビを見る、自分の洗濯物をたたむなど、個室での生活が、リビングにまで見られる
筆者撮影 |
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集合住宅を改修したGHでは、改修前の住戸ユニットを保持することで、共用空間・トイレなどの水廻りといくつかの個室で構成される分節化された小規模ユニットを計画することが可能となっている。それは、居場所や一緒に過ごす相手の多様化、移動の促進による行為の自発的な転換や新たな行為の触発にもつながっている。また、入居者は、帰属するユニット全体を自領域として認知する傾向がみられ、個室以外にも「自分の場所」であると意識できる場所があることは、環境への順応性、場所に対する愛着や認知力を高めるとともに、それが個室廻りに位置することで、公私領域の緩やかな変化につながり、個室から生活行為を引きだし、生活の主体的な組立てに寄与している。 |