Renovation Interview 2008.8.22
リノベーションのプロセス──歌舞伎町まちづくりの作法
[座談会]平井光雄×橘昌邦×林尚恒 進行:倉方俊輔+新堀学
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吉本興業との出会い
倉方 そうした企業のひとつとして吉本興業と出会ったのでしょうか。
中山新宿区長さんが「ルミネ the よしもと」の2周年のパーティに行かれて、区と吉本興業さんとの付き合いがまずできました。その後、平成18年の1月の喜兵衛プロジェクトを立ち上げるキックオフパーティを風林会館で行なった際に、吉本興業の吉野社長とお話をさせていただきましたところ、当初は劇場/ライブハウスのための場所がないかとお探しになっていましたので物件を探すお手伝いをすることになりました。
一方で、地元の方々から旧四谷第五小学校をうまく活用できないかといった声もありましたし、当時の自転車置き場という使い方はよいかたちでないだろうということでこの場所をいったん喜兵衛プロジェクトとして使わせてもらい、それを受け皿にして誘致できないかと考えておりました。そのことを区の方に話しましたところ、非常に興味を持っていただいて、この話に繋がったということです。
倉方 区のほうへアイディアを打診をしたのは、いつころになりますか。
平井 喜兵衛プロジェクトの会合で吉本興業さんを呼んでお話を聞きました。東京本部ということでしたが、大衆文化・娯楽の企画・制作の拠点形成に資すると考え、平成19年の1月に区に提案しました。
倉方 打診を受けてからの吉本側の経過をお聞かせください。賛否両論あったと思いますが。
林尚恒 自転車が網の中に積まれてあって、第一印象は悪かったですね。
もともと神保町のビルが手狭になっているというのが前提としてありました。さらに、ルミネがすごく成功していて、新宿の人の多さやマーケットの可能性をすごく感じていたこと、それから、新宿区さんとの地域貢献も含めて、学校というところに引っ越したら面白いんじゃないかなというのが社の判断としてありましたね。
結果的にはよかったと思います。最初は廃校して13年死んでいた建物ですけど、当時の姿を見ている人間としては今のこの状況は信じられないですよね。活性化された建物というか。建物は生き物なんだなとすごく感じますね。
林尚恒 林尚恒氏
倉方 これくらいの規模というのはオフィス空間としてはどのように評価されていますか。また、新宿という場所のポテンシャルというのを意識されていたようですが、この場所自体は新宿駅から近いとは言えませんよね。場所性について、どのように捉えていますか。
坪数としてみたら、以前の神保町のオフィスの約1.5倍くらい。教室だけの面積で見るとちょっとだけ増えたくらいです。適正な広さじゃないかなと思いますね。
ここは、もともと花園神社の土地じゃないですか。花園神社の境内には芸の神様が祭られている浅間芸能神社あります。僕は芸能の神様に呼ばれたとよく言っていて、その神が導いてくれた、吉本は最初からここに来る会社だったんだなんて思っています。
倉方 区との条件を決めるなかで問題が起こったことはありましたか。
平井 他の学校施設活用の例でいうと、西新宿に旧淀橋第三小学校があります。現在、芸能花伝舎といって(社)日本芸能実演家団体協議会に貸していて、地域と協働でいろいろな芸能文化活動をやっています。旧淀橋第二小学校という京王プラザの前にあった小学校跡地は、信託ビルとして活用しています。旧四谷第四小学校は、東京おもちゃ美術館として今年4月にオープンし、広く一般の人に開放しています。
そういったなか、旧四谷第五小学校を単に一民間企業に貸すのはどうかという議論はありましたが、吉本興業さんの場合には、歌舞伎町ルネッサンスへの貢献や、新宿区の大衆文化・娯楽の振興への協力を条件として検討していったわけです。また、建物の耐震工事や設備工事が必要なので、それらを全部引き受けていただけるのであれば区としても歓迎ですというところで、話がまとまった次第です。»

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