Renovation Interview 2008.9.30
美術と建築を横断し、社会を知る──金沢におけるCAAKの試み
[座談会]吉村寿博×鷲田めるろ×林野紀子 進行:新堀学+倉方俊輔
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社会を知るきっかけ──金沢アートプラットホーム2008
鷲田 金沢アートプラットホーム2008は、10月4日から12月7日まで、《金沢21世紀美術館》をふくめて全部で14カ所を会場として、19組の作家が出展しています。いままでこのようなプロジェクト型のものをたくさんやってきたアーティストが参加します。例えば中村政人さんやアトリエ・ワン、もう少し若手でKOSUGE1-16、それから友政麻理子さんのような大学に在籍しているような人たちも入っていて、どの作家も金沢と関わってプロジェクトができる人という基準で選んでいるので、日本のアーティストがたくさん入っているというのは特徴ですね。金沢美大の青木千絵さんや高橋治希さんといった、金沢の作家も選んでいます。それから、今回は、私が全員を選んだわけではなくて、美術館の4人のキュレーターそれぞれが作家を選びました。一人のキュレーターがすべてをコントロールするというよりは、複数のキュレーターとキュレーターに近いような役割を果たしているアーティストがそれぞれ独自にプロジェクトを展開するというようなことを目指していますね。
新堀 この展覧会で金沢のなにが変わりそうですか?
鷲田 プラットホーム展は今回が1回目ですけど、3年おきくらいで続けていければと考えています。そうすると、2回目が3年後、3回目が6年後になりますが、その年はちょうど北陸新幹線が金沢へ開通するんですね。そのときに、まちの中を舞台としたある程度大きな国際展に持っていけるといいなというのが目標としてはあって、そのための下地をだんだんつくっていくことを考えています。下地というのは、人や場所を発掘していくということです。例えば、お年寄りの人たちと一緒になにかやるプロジェクトは、そのプロジェクトを実現させる目的がまず最初にありますけれども、その過程は、現在の金沢のリサーチでもある。金沢にどういうお年寄りがいてどんな生活をしていて、どうすれば美術館と関わりを持てて、どうすればお互いのためになるのか。アクションを起したときにうまくいかなくても、試してみることでそれがリサーチになればいいと思っています。展覧会は、その結果のプレゼンテーションになりますから、こういう活動だったら続けていこうと行政もまちの人も思ってもらえるようにするのが、クリアすべき最低限の目標です。自分であらかじめかたちにしたいものがあるというよりは、プロジェクトを通じて、自分たちが世の中のシステムを理解するのに役立てばいいなと思っています。
新堀 それは社会実験と言えるのでしょうか?
鷲田 社会を試すというよりは、美術館が社会を知るということに近い気がするんです。美術館の中にいるとぜんぜん気づかないような社会の仕組みや問題点というものがあって、ふつうはその問題点があるまま、決められたようにしかできないところを、美術というものを口実にして、社会を変えたいと思っている人たちとうまくコラボレートして、そういった問題点を目に見えるかたちにするということです。
新堀 社会との関係が《21世紀美術館》の中でだんだん蓄積されていくということですね。
鷲田 そうですね、そのときに知ったことを、うまく公開するとともに美術館の中でも共有していくことは大事かなと思います。
新堀 結果がアーカイブされていき、自然に公開され共有されるように思えますが。
鷲田 いや、なかなかその共有が難しくて、試みた結果、できたこととできなかったことを整理してスタッフ同士で共有するためには努力をしないといけません。ただ記録写真を撮るだけでは実現できなかった部分は残っていきません。こういうことを試したけれどもここでひっかかってうまくいかなかったというようなノウハウを共有しなければいけないんです。CAAKの中でもそういう情報が共有されればいいと思っていて、それは美術館だけの問題ではありません。»
金沢アートプラットホーム2008

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